武蔵小山駅から徒歩15分の場所にある、住宅密集地の集合住宅。敷地のある平和通りは商店街の延長にあり、歩行者や車の往来も活発だ。今回の計画では足下の住戸から全体の居住性へと繋がる仕組みと、狭小ワンルームであっても特有の窮屈さから解放され「住まい手の可動域を広げる」住戸群を目指した。足下1階住戸にロフト付きの住戸を配置し、メインエントランスを2.5階へ持ち上げ路地のスケールとつながるアプローチを演出。2、3階に各室プランの違う住戸、4、5階はメゾネット形式とし、一住戸は屋上利用もできる性格の異なる住戸をもつ構成とした。特徴的な1階はロフト床がぐるりと回り、ハシゴを掛けて利用する拡張した棚的な場所であり、趣味のものなどが置ける場所として設えている。ハイサイドライトからの光は間口が狭く、人通りの多い通りに対しても安定した環境をつくる。また玄関脇のサッシを開ければ、開放的な住戸へと性格が変わりポーチが縁側のようなスペースとなる。1階のロフト分床が上がった上階住戸は、周囲と視線のずれを生み、天井、床にそろえた個性的な窓が周囲の景色を切り取る。最上階は天井高さを上げ、大きな吹き抜けなどが取れない分、密集した環境でも空がだけが望める階とした。集合住宅の足下を平面、断面両方に拡張することで上階が少しずつ魅力的な環境を享受できる相互関係的な在り方を目指した。